追悼!九條今日子展「きみが歌うクロッカスの歌 寺山修司と九條映子のラブレター」 [2014年07月17日]
中学校の修学旅行は東京だった。二重橋や銀座を見学し、そのあと浅草国際劇場でSKDのレビューを見た。3階席のいちばん遠いところから、踊り子たちの華やかなラインダンスを観て、たしかに東京の一端に触れたように気がした。そのことを九條さんに話し、「ぼくね、九條さんのダンス観たよ」と云うと、「嘘よ、時代が違うもの」。ええ、じつはそうなんです。「寺山がね、浅草で踊っているわたしを見て、それで見初めたなんて云うけど、あれ、ぜったい嘘よ」。でも、ぼくにはそれが嘘とは思えない。寺山さんだって修学旅行で浅草国際劇場のレヴューを見たかもしれない。故郷、そして東京。あそこには「望郷」の匂いがあった。それはともかく、寺山さんが浅草国際劇場を舞台に活躍していた九條さんを見初め、恋をしたことは確かだ。こうして始まったふたりの愛。今回の展覧会はそんなふたりのなれ初めからはじめてみようと思う。
会期=2014年8月1日(金)から2015年3月29日(日)まで
会場=三沢市寺山修司記念館エキジビットホール
開館時間=9時から17時まで(入館は16時半まで)
入館料=一般530円(常設展入館料含む)、一般団体430円(20名以上)、高大生100円、小中生50円(土曜日は小中生無料)
お問合せ=寺山修司記念館 電話0176-59-3434
展示構成
1 九條映子時代
1935年10月22日、東京麻布に生まれ、三輪田学園を卒業したのち、松竹音楽舞踊学校を経て、SKD(松竹歌劇団)に入団、舞台デビューを果たした九條映子は、やがて松竹映画に移り、『花嫁雲に乗る』『黄色いさくらんぼ』などに出演、青春スタートして多くのひとを魅了します。ここでは、寺山と出会う前の、青春スター「九條映子」時代の資料を中心に展示します。
2 寺山修司との出会い、恋愛、新婚生活
1960年7月10日、松竹の映画監督篠田正浩さんから突然の電話。「エコ、出て来られない? 引き合わせたい男がいるんだ。エコちゃんのファンなんだって」。そうして紹介されたのが映画『乾いた湖』の脚本を担当していた新進のシナリオライター寺山修司でした。ここでは寺山との出会い、恋愛、そして結婚までの軌跡をふたりの往復書簡、数々のラブレターを中心に展示します。九條映子に捧げられた短歌「映子をみつめる」の中から一首。「わが家の見知らぬ人となるために水甕抱けり胸いたきまで」
3 演劇実験室「天井棧敷」のプロデューサー時代
1967年、寺山修司は世田谷区下馬の住居に演劇実験室「天井棧敷」を設立します。寺山をその気にさせた直接の動機は、早稲田の学生劇団「仲間」を主宰していた東由多加との出会いでした。東由多加演出の『血は立ったまま眠っている』に感動したふたりが、東の強い勧めもあって、演劇界への進出を決めたのです。ここから九條今日子のプロデューサー人生が始まります。天井棧敷全演劇公演の制作をつとめ、寺山との離婚後も、同志としての活動は途切れることなく、それは寺山が亡くなるまで続きました。
4 寺山修司没後から現在
1983年5月4日、寺山修司は47歳の若さで他界。劇団は解散。九條は「テラヤマ・ワールド」を設立、寺山の著作権管理者として、寺山修司記念館の創設に奔走し、残された寺山ファンのため、数多くの講演を重ね、寺山の業績をより多くのひとに知ってもらい、また理解してもらうよう飛び回ります。また、三沢市観光大使として「三沢まつり」にテラヤマ山車を参加させるなど、三沢市の文化、観光の発展にも寄与しました。九條今日子の講演ノートや著作、記念館創設までの資料を展示します。
5 九條今日子「猫」コレクション
無類の「猫」好きだった九條さん。海外公演の際、寺山といっしょに買い求めた可愛らしい猫グッズ。ほかに「花」切手のコレクションも合わせて展示します。
追悼! 九條今日子 「九條さん、お疲れさま」。これからは寺山さんとこれまでの苦労話に花を咲かせてください。いままでほんとうにありがとうございました。
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