ミリオンセラー「時には母のない子のように」(歌:カルメン・マキ 作曲:田中未知)や「あしたのジョー」(歌:尾藤イサオ 作曲:八木正生)の作詞家でもある寺山修司は、「ジャズを楽しむ本」(共編:湯川れい子1961)などの著作もあるように、音や音楽についての興味、また造詣の深さは並大抵のものではありませんでした。20代前半、ラジオドラマという耳を媒介とする仕事でつちかった音感は、やがて演劇実験室「天井棧敷」における『毛皮のマリー』や『新宿版・千一夜物語』公演で、まず自らが担当した「選曲」という分野で花開いてゆくことになります。時代への嗅覚、ドラマツルギー、そして何よりも自分の書いた台詞をより美しく輝かせるために、古賀政男、M J Q、バッハ、ワーグナーといったあらゆるジャンルからの音楽を「選曲」し、音とひかりの融合、俳優の肉声と肉体の実在感を際立たせ、寺山独自の幻想的な舞台を作り上げることに成功したのです
。
日本の現代音楽の作曲家との共同作業も多く、高校生時代、俳句同人誌「天狼」でライバル関係にあった、作曲家・松村禎三とは戯曲デビュー作 『血は立ったまま眠っている』で組み、武満徹、山本直純、諸井誠、湯浅譲二などといった日本を代表する作曲家とラジオ、テレビ、映画を通じて多くの作品を手がけました。
『網走番外地』などの音楽を手がけたジャズピアニスト・八木正生には『あしたのジョー』の作曲だけではなく、天井棧敷第4回公演『花札伝綺』の音楽も依頼していますし、古賀政男とはテレビの正月番組で共演し、美空ひばりを姉に、森進一を弟に見立てた作品を発表したほか、五木ひろしの『浜昼顔』をヒットさせたりもしています。
デザイナー、イラストレーター、映画監督として名を馳せる和田誠の、作曲家としての才能に注目していた寺山は、天井棧敷第2回公演『大山デブコの犯罪』の作曲や、天井棧敷の主題歌を依頼しました。
『書を捨てよ町へ出よう』の台本には「叩きつけるようなロック!」とト書きで指定してあります。黛敏郎司会の「題名のない音楽会」では作家でもあるギタリスト・深沢七郎と共演したり、寺山の音楽フィールドはロックからフォークロアまで無限のひろがりをみせています。
天井棧敷の特別公演、西武劇場(現:パルコ劇場)での最初の作品は、ベラ・バルトークの『中国の不思議な役人』でした。このとき音楽を担当したJ・A・シーザーは、バルトークの曲を巧みにアレンジして自分の作品に取り込んでいます。クラシック、ロックオペラ、また日本の浄瑠璃や歌舞伎といった伝統音楽への理解の深さ。自前の音楽家をようやく得た寺山は、シーザーを焚きつけ、もっと遠くへかれをいざないます。舞台版『書を捨てよ町へ出よう』を観て、 寺山の世界に飛び込んだJ・A・シーザーは当初、デザイナーを目指していました。しかし、寺山はかれの音楽的センスに目をつけ、作曲家になることを勧めます。以来、映画や演劇での寺山修司とJ・A・シーザーの関係は、イタリアの 映画監督フェリーニと作曲家ニーノ・ロータと比肩しうる強力な結びつきとなってゆきました。
今回の企画展では、寺山の仕事にかかわった数多くの音楽家たちの関連資料、 寺山修司作詞によるレコード、及びかれの愛蔵レコードなど170枚も一挙に展示します。音楽の世界でも、秀でた才能を発揮した寺山修司の、ミラクル・ミュー ジック・ワールドをご堪能ください。
寺山修司記念館、今年のイベントが固まりつつあります。
恒例の春フェスは5月3日(日・祝) 、4日(月・祝) 、5日(火・祝) 。4日は、佐々木館長と青森大学学生の朗読「誰か故郷を想はざる」、福士正一さんの舞踏、お待ちかね三上博史さんのライブ「世界の涯てまで連れてって」もあります。
〈写真〉三上博史さんライブ風景(2014) 毎年大盛況です!
3-5日の3日間とも、ファミリーに大人気の体験型木工遊具「ムシムシコロコロ・パークJr.」も登場。
〈写真〉ムシムシコロコロ・パークJr.(2014) 三沢高校ボランティア部の皆さんと一緒に安全に遊べます。
「寺山修司演劇祭2015」が7月10日(金)から12日(日)までと3日間に拡大。そして夏フェスは8月1日(土)と2日(日)です。
さらに、12月には今年初の試み「寺山修司音楽祭」を企画しています。
以上は現時点の予定ですので、詳細は随時発信して参ります。どうぞご期待ください。
現在記念館で開催中の企画展「追悼! 九條今日子展」がリニューアルされました。三沢市の発展に尽力した九條さんにスポットをあてた資料展示に加え、「テラヤマ山車」、宇野亜喜良さんがデザインした『人魚姫』のお人形さんも展示します。メルヘンチックでキュートな宇野亜喜良さんの世界をお楽しみください。
期間は3月29日(日)まで。必見です!お見逃しなく。
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