寺山修司記念館、4月からの企画展は、寺山修司没後30年を記念して、「寺山修司の原稿と本 ―寺山修司の直筆原稿と生前全著作―」をお届けいたします。
1983年5月4日、寺山修司はわずか47歳の若さで、肝硬変に腹膜炎を併発してこの世を去りました。俳句、短歌、詩、小説、評論などの文学者として、演劇、映画、写真などを通じて時代のアジテーターとして、あらゆるジャンルに膨大な足跡を残しながら、不意に消えて行った寺山修司。絶筆となった「墓場まで何マイル?」には、こう記されています。
「私は肝硬変で死ぬだろう。そのことだけは、はっきりしている。だが、だからと言って墓は建てて欲しくない。私の墓は、私のことばであれば、充分。」
自分の死を予期し、なお「ことばのひと」としての矜持を失わなかった寺山修司にとって、書くこと、表現とはなんだったのかをあらためて問い直したいと思います。あとに残された者の哀惜の思いと愛をこめて。
今回の企画展では、第一作品集『われに五月を』(1957年)から『ニーベルンゲンの指環・ラインの黄金』(1983年)まで、寺山修司生前の全著作187冊(編著/翻訳を含む)を一堂に会します。
その一冊一冊が、いわば寺山修司の墓標とも云うべきものであり、そのおびただしい数の墓標に、涙して手を合わせるもよし、抱きつくもよし。今回は展示品をガラスケースに収めてしまうのではなく、だれもが手に取ってページを捲れるような展示方法にしようと思っています。静かなたたずいの、清冽な気合に充ちた図書館をイメージしていただけたらと思います。何冊かご紹介しましょう。
たとえば処女作『われに五月を』には以後の寺山文学のエッセンスがすべて詰め込まれています。また『ガリガリ博士の犯罪帖』では単なる戯曲集の枠をはみ出し、演劇そのものを書物にしようと試みたものです。宇野亜喜良さんと組んだ、フォア・レディース・シリーズでは、文章のみならず、造本・装幀も含め、本そのものが少女の純情に訴えかけるような仕組みがいっぱい、粟津潔さんが装幀した『地獄篇』には、何故か蝋燭と火縄が付録としてついてきます。このように、寺山の「本」は、書物であることを超え、読者を挑発する「武器」として存在しようとしたのではないかと思われます。
直筆原稿も初公開のものがあります。天井棧敷旗揚げ公演「青森県のせむし男」の台本、最後のパリ公演「奴婢訓」の台本と箱書きなどがそうです。他にも演劇、映画、出版関連の直筆原稿を多数公開いたします。
書くことは速度でしかなかった 追い抜かれたものだけが 紙の上に存在した
読むことは悔悟でしかなかった 王国はまだまだ遠いのだ
「書かれた詩句」以上に 「消された詩句」の方が 人の心を打つこともあるのだ
「寺山修司の原稿と本」は、あなたを謎の王国へ導くことができるか、「書かれた詩句」はあなたのこころに浸透し、「消された詩句」は、ほんとうにあなたのこころに通底するのか。ぜひ、記念館に足をお運びいただき、実物を手に取って、ゆっくり寺山修司のぬくもりを感じてください。
今企画展の関連イベントは以下の通りです。
「修司忌/献花」寺山修司命日
2013年5月4日(土・祝)13時から
会場 寺山修司顕彰文学碑(屋外無料/館内有料)
寺山修司が作詞した『戦争は知らない』の曲が流れるなか、だれもが野の花一本を手に参加できます。
寺山修司へのオマージュ「懐かしのわが家」
2013年5月4日(土・祝)13時10分から
会場 寺山修司顕彰文学碑(屋外無料/館内有料)
朗読 佐々木英明(寺山修司記念館館長/詩人)、青森大学演劇団「健康」、青森大学文芸部「幸畑文学」
舞踏 福士正一(舞踏家/オドラデク道路劇場主宰)
献花に引き続いての朗読と舞踏のパフォーマンス。「私の書く詩のなかにはいつも家がある」と、
家への屈折した思いを、終生書きつづけた寺山修司の「家」とはなにか?
三上博史ライヴ「ロング・グッドバイ 寺山修司に捧ぐ」
2013年5月4日(土・祝)14時から
会場 屋外多目的スペース(屋外無料/館内有料)
出演 三上博史(俳優)、エミ・エレオノーラ(ミュージシャン)
三上博史さんの透明感のある深い声、エミ・エレオノーラさんとぴったり息の合ったライブをお楽しみください。
寺山修司遊びの劇場「ムシムシコロコロ・パークJr.」
2013年5月3日(金・祝)、4日(土・祝)、5日(日・祝)11時から15時まで
会場 屋外多目的スペース(屋外無料/館内有料)
遊びとアート、寺山修司からの影響のもと、創作活動を開始した simizzy が、
こどもたちに仕掛けた楽しくも心優しい誘惑! 親子で木製の遊具を経験してください。
※ 荒天時の場合は館内での開催になり、その際は有料となりますので、あらかじめご了承ください。
三沢市寺山修司記念館のご案内
開館時間 9時から17時(入館は16時30分まで)
入館料 一般500円(常設展300円+企画展200円) 一般団体400円(20名以上) &n
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