刑務所とわがアパートを地中でつなぐ古きガス管
これは寺山修司の第二歌集『血と麦』に収められた短歌です。「刑務所という滅多に触れることにはならないけれど確かに存在する場所にいるきみの日常や現実と、アパートというありふれた私の日常や現実が、地面の中の見えないところでつながっている」ということは「寺山修司が生きていた日常や現実と今わたしたちが生きている日常や現実はつながっている」ということでもあります。あるいは三沢と東京、東京と世界。虚構と現実。現実と書物。そういったことも見えない何かで、つながっていると考えられます。
過去7回の「寺山修司市民大学」では、歌人、俳人、演劇、映画の関係者、またその研究者など多彩な講師の方々をお招きし、寺山修司にまつわる興味深いエピソードをまじえた幅ひろい講義を展開してきました。受講者も年々増え、少しずつですが寺山修司は確実に市民のあいだに浸透して来ています。
「わたしたちはどこからやって来て、どこへ向かおうとしているのか」。寺山修司は問いかけるひとです。そして、いまこうして生きていることをたえず伝えようとしてきたひとです。大切なのは理解することではなく、かれを、かれが生きた時代を、そしてわたしたちが生きている時代を感じることだろうと思います。寺山修司をもっと身近に。そうです。隣にいて、ちょっと淋しそうにしている、まるで気心の知れた友だちのように。
さあ、「寺山修司アートカレッジ」開講しました。みなさま、こぞってのご参加を。
アートワークショップ
福士正一
ふくし・しょういち(舞踏家)
舞踏家。1953年青森県生まれ。オドラデク道路劇場主宰。山形大学在学中に踊り始める。帰郷後青森市役所で「公務する舞踏家」として35年踊り続ける。農家や分校、神社や商店街など様々な現場にゆるやかに乱入し、取り巻く風景を舞台に踊る「オドラデク道路劇場」を国内外で展開。独特の踊りは「正ちゃんダンス」として親しまれている。1997年度青森県芸術文化奨励賞受賞。
市民大学
森山大道
もりやま・だいどう(写真家)
1938年大阪府池田市生まれ。デザイナーから転身し、岩宮武二、細江英公の助手を経て、1964年にフリーの写真家として活動を始める。1967年『カメラ毎日』に掲載した「にっぽん劇場」などのシリーズで日本写真批評家協会新人賞を受賞。
近年では、サンフランシスコ近代美術館(1999年・メトロポリタン美術館、ジャパンソサイエティー(ニューヨーク)巡回)、国立国際美術館(2011年)、テートモダン(ロンドン)で行われたウィリアム・クラインとの合同展(2012~13年)他、国内外で大規模な展覧会が開催され、国際写真センター(ニューヨーク)Infinity Award功労賞を受賞(2012年)するなど、世界的に高い評価を受けている。
写真集『新宿』(2002年、2003年 第44回毎日芸術賞受賞)、『モノクローム』『カラー』(2012年)、『犬と網タイツ』(2015年)等多数。
町口覚
まちぐち・さとし(グラフィックデザイナー)
グラフィックデザイナー/パブリッシャー。デザイン事務所「マッチアンドカンパニー」主宰。映画・演劇・展覧会のグラフィックデザイン、文芸作品の装丁などを幅広く手掛け、常に表現者たちと徹底的に向き合い、独自の姿勢でものづくりに取り組んでいる。2005年、自社で写真集を出版・流通させることに挑戦するため、写真集レーベル「M」を立ち上げると同時に、写真集販売会社「bookshop M」を設立。2008年より世界最大級の写真の祭典「PARIS PHOTO」にも出展しつづけ、世界を視野に“日本の写真集の可能性”を追求している。2009年・2015年に造本装幀コンクール経済産業大臣賞、2014年東京TDC賞など国内外の受賞多数。
笹目浩之
ささめ・ひろゆき(テラヤマ・ワールド代表)
1963年茨城県出身。1987年に株式会社ポスターハリス・カンパニー設立。90年より演劇・映画祭・イベントの企画・宣伝・プロデュースも多数手がける。現在、株式会社テラヤマ・ワールドの代表取締役として、寺山修司の著作権管理及び三沢市寺山修司記念館の指定管理者(2009年から)もつとめる。編著に『ジャパン・アヴァンギャルドーアングラ演劇傑作ポスター100』。著書に、『寺山修司とポスター貼りと。』ほか。
アートワークショップ
simizzy シミージー/清水一忠
(造形作家)
造形作家。1969年神奈川県生。木を素材とした作品を中心にして家具、舞台美術オブジェ、住宅デザイン、体験型オブジェ「ムシムシコロコロ・シリーズ」のパフォーマンス、寺山修司展(2000年)のための天井棧敷公演「百年の孤独」舞台模型製作、演劇実験室◎万有引力の舞台美術協力、寺山修司◎劇場美術館1935-2008会場設計オブジェ製作など各方面で活躍している。
市民大学
小笠原眞 おがさわら・まこと
(詩人)
1956年十和田市生まれ。青森県立八戸高校、岩手医科大学卒。耳鼻咽喉科医師。21歳の頃から詩作を始める。詩誌「朔」同人、青森県詩人連盟副会長、日本現代詩人会会員。1979年第33回岩手芸術祭文芸大会芸術祭賞受賞、2002年第2詩集『あいうえお氏ノ徘徊』(ふらんす堂)にて第24回青森県詩人連盟賞受賞、2008年十和田市文化奨励賞受賞、2014年評論集『詩人のポケット』(ふらんす堂)にて第10回青森県文芸賞受賞。
アートワークショップ
及部克人 およべ・かつひと
(武蔵野美術大学名誉教授)
武蔵野美術大学名誉教授。
「現代演劇のアートワーク展」(西部美術館/1988年)、「柳瀬正夢展」(武蔵野美術大学美術館/1990, 1995, 2008年)、「フランツ・チゼック」展実行委員 (こどもの城+武蔵野美術大学共催/こどもの城/1990年)、「アングラ:日本のポスターのアヴァンギャルド1960〜1980」展企画図録編集委員(1999年)、「日本の演劇ポスター展」(2015年5月1日〜5日/初日対談:笹目浩之/扇田昭彦/串田和美/及部克人)
市民大学
梅内美華子 うめない・みかこ
(歌人)
1970年、青森県八戸市生まれ。短歌結社「歌林の会」所属、馬場あき子に師事、編集委員。1991年角川短歌賞受賞、2001年歌集『若月(みかづき)祭(さい)』で現代短歌新人賞、2012年『エクウス』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、葛原妙子賞。「あぢさゐの夜」で短歌研究賞。青森県褒賞。歌書に『現代歌枕 歌が生まれる場所』『ここからはじめる短歌』等。
アートワークショップ
山田百次 やまだ・ももじ
(劇作家・演出家・俳優)
青森県出身。劇作家、俳優。劇団野の上主宰。2009年から青森を拠点とする劇団野の上を結成。方言を用いた芝居で日本全国で公演を行っている。2013年「東京アレルギー」で劇作家協会新人戯曲賞最終候補。劇作の他に、津軽弁による一人芝居「或るめぐらの話」でも日本全国での上演や早稲田大学の講義での上演も行っている。
市民大学
横浜聡子 よこはま・さとこ
(映画監督)
1978年、青森県生まれ。02年に映画美学校で学ぶ 。卒業制作の短編『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』が06年CO2オープンコンペ部門最優秀賞受賞。その助成金をもとに長編1作目となる『ジャーマン+雨』を自主制作。同作は自主制作映画としては異例の全国劇場公開となり、07年度日本映画監督協会新人賞を受賞。08年『ウルトラミラクルラブストーリー 』( 出演:松山ケンイチ、麻生久美子)を監督。松山ケンイチが第64回毎日映画コンクール男優主演賞したほか、トロント国際映画祭他、多くの海外映画祭にて上映される。 2016年『俳優 亀岡拓次』(安田顕、麻生久美子)が公開。
市民大学
山田勝仁 やまだ・かつひと
(演劇ジャーナリスト)
1955年生まれ。青森県・大間町出身。早稲田大学法学部卒業。1980年~2015年、夕刊紙「日刊ゲンダイ」編集局勤務。学生時代に観た「天井棧敷」の舞台に衝撃を受け、寺山演劇にのめりこむ。
著書「寺山修司に愛された女優 演劇実験室・天井桟敷の華・新高けい子伝」(河出書房新社)。共著「TOKYO芝居探検隊」「NIPPONアイドル探偵団」(共に宝島社)、退職後は演劇ジャーナリストとして活動。日刊ゲンダイで劇評「演劇えんま帳」を連載中。国際演劇評論家協会会員。
アートワークショップ
佐々木英明 ささき・えいめい
(詩人・寺山修司記念館館長)
1948年、青森県・平内町出身。詩人。
1968年県立青森高校を卒業し、寺山修司が主宰する演劇実験室「天井棧敷」に参加。舞台「書を捨てよ、町へ出よう」、映画「書を捨てよ町へ出よう」、「邪宗門」、「阿片戦争」他に出演。1972年、天井棧敷退団。1987年帰郷。現在は、詩作に励みつつ、朗読会、演劇、講演などの活動を精力的につづけている。詩集、「愛について」(1993年)、「心を閉ざす」(1996年)、「刈株集」(2010年)がある。2012年4月より三沢市寺山修司記念館館長。
市民大学
三川博 みかわ・ひろし
(歌人)
1949年青森県八戸市生まれ。弘前大学医学部卒。精神科開業医。1971年、「潮音」入社、「弘前潮音会」入会。1993年、第一回青森県短歌賞受賞。1999年、日本歌人クラブ会員。2003年、青森県歌人懇話会常任理事。2004年、第19回毛越寺曲水の宴に出演、八戸市文化奨励賞受賞。2007年、第一歌集『白嶺』上梓、日本歌人クラブ青森県代表幹事。2010年、「八戸潮音会」結成、会長。2012年、現代歌人協会会員、青森県歌人懇話会副会長。2014年、青森県歌人功労賞受賞。2016年、第二歌集『エントラッセン』上梓、日本歌人クラブ東北ブロック長。
市民大学
仁平政人 にへい・まさと
(弘前大学教育学部講師)
1978年生まれ。茨城県出身。東北大学大学院文学研究科博士課程を経て、2011年から弘前大学教育学部講師。専門は日本近現代文学。主な著書に『川端康成の方法―二〇世紀モダニズムと「日本」言説の構成―』(東北大学出版会)、『寺山修司という疑問符』(共編著、弘前大学出版会)がある。
主催:寺山修司五月会 共催:三沢市寺山修司記念館/テラヤマ・ワールド
「平成28年度三沢市協働のまちづくり市民提案事業」対象事業
「あおもり県民カレッジ三八地区地域キャンパス講座」
青森県三沢市大字三沢字淋代平116-2955
TEL:0176-59-3434 (9:00〜17:00)
Mail:shuji_terayama@mctvnet.ne.jp
この講座は、
あおもり県民カレッジの単位として
認められます。
「寺山修司五月会」は、1990年3月、それまでの「文学碑建立発起人会」に代わって設立されました。歌碑建立という大きな役目を果たし、次なる目標、「寺山修司記念館」創設へ向かっての発展的解消でした。寺山修司とは古間木小学校、中学校で同級同窓だったひとたちが中心ですが、最近は寺山修司に関心を持つさらに若い世代の会員も増えて来ています。現在、会員数30名。1997年の記念館創設後も「短歌の径」歌標設置、記念館イベントのサポート、市民大学、ゆかりの地標識設置、寺山食堂など、寺山修司を三沢市民に浸透させようとするさまざまなボランティア活動を行っています。